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人手不足の動物病院経営をどう乗り切るか

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動物病院経営

人手不足で悩まされている動物病院も多くあります。今回はそれをどうやって乗り切っていくかを説明していきます。

 

【動物病院数・獣医師数・動物看護師数】

まず大前提に獣医師と動物看護師の数を見ていきます。

 

令和5年の国家資格を取得した動物看護師数:18,481人

【第1回 愛玩動物看護師国家試験の結果について】より引用

 

令和4年の小動物診療における獣医師数:16,203人

【獣医師法第22条の獣医師の届出状況等について】より引用

 

令和4年の動物病院の開設届け数: 12,616件

農林水産省【令和4年飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)】より引用

 

動物病院1件当たりの動物看護師(国家資格者)数は1.46人になります。

動物病院1件当たりの獣医師数は1.28人になります。

 

このような数字をみると、人手不足であると思われないかもしれませんが、動物病院というのは業務の性質上、稼働人数が多くならざるを得ない業態です。つまり、全体を見たらまだまだ人手不足だと言えます。

また、獣医師だけでなく、現時点では国家資格化された看護師もまだまだ不足していると考えられます。ただこちらは今度、取得していく人が増加していくので緩和していくかと予想されます。

 

【人手不足によるデメリット】

人手不足を放置していくと経営が行き詰まったり、問題が発生したりします。実際、人手不足で出てくるデメリットを記載致します。

 

・待ち時間が長くなる

飼い主様からの不満が多いのが待ち時間の長さです。人手不足から待ち時間が多い病院を今までたくさん見てきました。その結果、悪い口コミに繋がったり、従業員の焦りにも繋がってきます。

昔までは待つことが当たり前のような文化でしたが、今では飼い主様側も、動物の負担の軽減のためにも待ち時間が少ない病院を選ぶケースも増えています。

 

・診療や接遇が雑になる

忙しくなると診療や接遇が煩雑になってしまうケースがあります。その結果、説明不足・情報伝達の不足が起き、クレームや転院してしまうといったことになりかねません。

実際、セカンドオピニオンのほとんどが説明不足によるものが多いです。

 

・離職が増える

忙しさのせいで病院内の雰囲気なども悪くなるケースも多いです。また身体的な疲労も増えるので、従業員の離職につながることもあります。

 

人手が少ない分、一時的には人件費率は下がりますが、その状態をずっと続けていくのはリスクがあると言えます。

 

【人手不足の対策】

ではどうやって人手不足を解消していくか

 

・動物看護師の活躍

23年度に動物看護師は国家資格化しました。それにより今まで担えなかった仕事もできるようになりました。

今まで獣医師が実施していた仕事をどんどん動物看護師に委譲していくことが大事です。

※国で定められた動物看護師の業務範囲内で行いましょう。

 

・動物病院でのDX化

動物病院はまだまだ紙の文化が根付いており、ITを導入しているケースも全体から見るとまだ少数だと言えます。

また、動物病院での経営において、システムが独立したモノが多く、まだバラバラの状況なので、DXは難しいのが現状です。つまり、部分部分はデジタル化できますが、運営全体を通したDXは難しいということになります。

ただ工夫することで現状よりも大幅に効率化できると言えます。

そして、一部分だけでなく、全体設計できるといいです。

例えば、予約システムを導入するだけではなく、それにまつわるWEB問診、顧客管理、電子カルテ、BIツール(経営数値管理)まで整備していくということが望ましいです。

 

・予約

WEB予約、WEB問診をすることで、アポイントが埋まりやすく、効率化します。動物病院業界でも徐々に増えてきています。こちらは月々のお支払いが比較的安価ですので、導入するべきと言えます。まだ予約制を入れていない動物病院はまずは予約制導入から実施しましょう。

 

・電子カルテ

こちらも導入病院は少ないですが、導線が広い診療所は確実に導入すべきでしょう。勿論、固定費は上がりますが、使いこなせばそれ以上の効果は見込めるでしょう。

 

・数値データ

動物病院を経営していると、項目数の多さから数値が読みづらい傾向にあります。これはどこの動物病院でも共通して言えます。そのため、廃棄なども多く、在庫管理に悩まれてる方もおられるかと思います。

そこで大事なのが数値管理です。

そしてそれはCSVやExcelでは難しいのが実情です。そのため、よくご提案させて頂くのがBIツールです。BIツールでデータ成形するので、レセコンから排出し、データ格納、BIに反映という形ですぐに見える化することが出来ます。

※勿論、読み込みづらい・データ成形しにいくケースもあります。

 

BIツールは使ってみて、やっと便利さを把握できるので、まずは導入してみるのがいいです。特に分院を展開している病院は必須になってきます。

ただBIツールも高い・安いがあるので、自分で成形できるPowerBIを使用するとよいでしょう。勿論、少し設定する上でテクニックが必要ですので、苦手な方はアウトソーシングしましょう。

 

自動精算機なども導入も徐々に増えてつつありますが、全体を見るとまだまだ少ないです。

 

そして、最終的な目的は、デジタルを応用することで生産性向上・省人化することです。そのため、導入前と導入後どうなったかをしっかり効果検証する必要があります。

 

そして、DXを実施することで、省人化を目指すことができます。デジタル化することで今まで人材を投入していた部分が削減され、場合によっては、人件費削減にも繋がってきます。

 

 

【人手不足にならないための病院づくり】

また多くの動物病院は人手不足である一方、採用・定着がうまくいっている病院もあります。そういった病院の特徴や取り組みについて触れていきます。

 

・労働条件・環境が整備されている

最低限、労働条件・環境が良くないと離職に繋がってきています。つまり、残業が当たり前だったりだとか休憩が取れないといったケースも離職に繋がってくるので、まずは整備していくことが大事です。

労働条件・環境がいいところは離職も少ないのも事実です。

 

・教育体制がしっかりしている

忙しさのせいで教える人がおらず、離職になるといったケースもよく耳にします。これでは本末転倒です。

採用したらしっかりとした教育の基盤が大事になってきます。

 

・職場の雰囲気がよいこと

日々働いていて楽しくなければ仕事は続けにくいです。つまり、職場環境の雰囲気が良いか悪いかで離職率が大幅に違います。そういった環境づくりも大事です。

 

集患がうまくいくと、こういった診療効率化や採用といった部分の課題が見えてきます。

つまり、一部を変えるだけでは不十分で全体を改善していくことが望ましいです。

人手不足の動物病院は改めて見直して頂けたら幸いです。