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動物病院業界動向|2023年版

  • 経営

動物病院業界動向レポート

ペット市場並びに動物病院業界に注目している方も多いと思います。

中には

・現在、獣医師で開業を悩んでいる

・動物病院を運営していて、規模をどんどん拡大しようか悩んでいる

・別業界から新規参入していきたい・するべきか悩んでいる

など計画を練っている方も多いかと思います。

そのため、今回は2023年時点での動物病院業界の動向をまとめました。

 

①飼育動物診療施設数(小動物、その他)の推移

飼育動物診療施設数(小動物、その他)

飼育動物診療施設数(小動物、その他)

 

飼育動物診療施設数(小動物、その他)は2022年に12,616件にのぼっています。

2012年10,741件から2022年には12,616件と10年間で1,875件(117.46%%)増加しています。

2012年から過去10年間の前年増加数の平均が188件だが、5年間の平均でみると155件にとどまっています。

つまり、飼育動物診療施設数(小動物、その他)の伸びは過去よりも多少鈍化していることが伺えます。

ただ決定係数R2=0.996であり、飼育動物診療施設数(小動物、その他)は伸びていくと予想されます。

 

※引用元:農林水産省 飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)

 

②エックス線装置届出施設数の推移

エックス線装置届出施設数

エックス線装置届出施設数

エックス線装置届出施設数から、往診などを除く施設を構えている動物病院の実際の開業件数に相当するという見方ができます。

よって、往診を除く動物病院の開業件数は10,350件(2022年時点)。

2012年9,336件から2022年には10,350件と10年間で1,014件(110.86%)増加しています。

2012年から過去10年間の前年増加数の平均が100件だが、5年間の平均でみると55件にとどまっています。

つまり、エックス線装置届出施設数の伸びは過去よりも大幅に鈍化していることが伺えます。

ただ決定係数R2=0.966であり、今後もエックス線装置届出施設数は伸びていくと予想されます。

 

※引用元:農林水産省 飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)

 

③獣医師数の推移

獣医師数

獣医師数

個人診療施設(犬猫)開設者・被雇用者数

個人診療施設(犬猫)開設者・被雇用者数

獣医師数は2020年は40,251人から2010年に35,379人と10年間で32,608人(113.77%)増加しています。

獣医師数の中でも個人診療施設(犬猫)開設者・被雇用者数は2020年は16,203人から2010年に13,271人と10年間で2,932人(122.09%)増加しています。

獣医師数の中でも個人診療施設(犬猫)開設者・被雇用者数の割合は2020年は40.25%であり、2010年の割合(40.70%)と比較すると▲0.45となっています。

獣医師数の決定係数R2=0.854

個人診療施設(犬猫)開設者・被雇用者数の決定係数R2=0.863

であり、両方とも今後も伸びていくと予想されます。

 

※引用元:農林水産省 飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)

 

④就業獣医師数別の施設の状況

就業獣医師数別の施設の状況2012年

就業獣医師数別の施設の状況2012年

就業獣医師数別の施設の状況2022年

就業獣医師数別の施設の状況2022年

動物病院の数は伸びているが、動物病院の規模(就業獣医師数別の施設の状況)に変化が出てきています。

2022年度は獣医師1人で運営している動物病院の割合は62.9%(7,932件)であり、獣医師2人以上37.1%(4,684件)となっています。

2022年の獣医師1人で運営している動物病院の割合は2012年から比較すると▲3%となり、その分2名以上の割合が+3%となっています。

2022年の獣医師1人で運営している動物病院の割合は2005年から比較すると▲8.7%となり、その分2名以上の割合が+8.7%となっています。

つまり、獣医師1名体制の小規模病院が減少し、中規模・大規模の動物病院が増加していることが伺える。これは企業病院の参入も要因の一つだと考えられます。

 

※引用元:農林水産省 飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)

 

⑤小動物診療(獣医師)における男女比

小動物診療(獣医師)における男女比

小動物診療(獣医師)における男女比

小動物診療(獣医師)における男女比割合

小動物診療(獣医師)における男女比割合

2020年の小動物で従事している男性は64.6%(平均年齢:51歳)、女性は35.4%(平均年齢:44)となっています。

男性は2012年から464人増加し、平均年齢も2歳上昇している。女性は2012年から1,099人増加し、平均年齢も3歳上昇しています。

 

※引用元:農林水産省 飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)

 

⑥獣医師国家資格合格数推移

獣医師国家資格合格数推移

獣医師国家資格合格数推移

  69回 70回 71回 72回 73回 74回
受験者数 1277 1141 1183 1146 1196 1254
合格者数 1128 942 1023 953 960 877
合格率 88.33% 82.56% 86.48% 83.16% 80.27% 69.94%

獣医師の国家資格の受験者は6回平均で受験者が1,199人である。受験者数の前回比平均が99.8%であり、然程大きな変化はみられません。

獣医師の国家資格の受験者は6回平均で980人である。受験者数の前回比平均が95.4%であり、多少合格が厳しくなっていることが伺えます。

獣医師の中で小動物診療所へ勤務する比率が2020年で40.25%であることを加味すると、国家試験合格者のうち約394人が新人獣医師として毎年動物病院に勤務すると

推測されます。

 

※引用元:獣医師国家試験の結果(過去5年間)

 

動物看護師合格者数

動物看護師合格者数

動物看護師合格者数

  既卒者・在学者 現任者 合計
受験者数 11,259 9,539 20,798
合格者数 9,712 8,769 18,481
合格率 86.3% 91.9% 88.9%

第一回動物看護師の国家試験が2023年に実施されました。

合計で20,798人が受験し、18,481人(合格率:88.9%)が合格しました。

そのうち、既卒者・在学者の合格者数は9,712人(合格率:86.3%)で、現任者の合格数8,769人(合格率:91.9%)でした。

現任者の合格率が高かったこともあり、より実践の内容が含まれたのではないかとも考察できます。

予備試験の合格率は99.5%であったため、予備試験よりも難易度が上がったことも伺えます。

 

※引用元:【第1回 愛玩動物看護師国家試験の結果について】

 

⑧都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数推移

都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数

都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数

  2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
登録頭数 6,526,897 6,452,279 6,326,082 6,226,615 6,154,316 6,107,548 6,095,250
予防注射頭数 4,688,240 4,608,898 4,518,837 4,441,826 4,390,580 4,286,980 4,320,473
注射率 71.83% 71.43% 71.43% 71.34% 71.34% 70.19% 70.88%

※1 登録頭数:狂犬病予防法第4条第2項の規定により、年度末現在において、原簿に登録されている頭数

※2 予防注射頭数:狂犬病予防法第5条第2項の規定により、市町村が年度中に交付した予防注射済票の数

※3 注射率:予防注射頭数を登録頭数で割った場合の割合

人口減少の要因もあり、犬の登録頭数と予防注射頭数は年々減少傾向にあります。5年間平均で犬の登録頭数は98.86%まで減少、予防注射頭数は98.72%まで減少しています。

犬の登録頭数と予防注射頭数が動物病院の顧客のメインとなる数字と言えます。 ※猫・エキゾ除く

 

引用:都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成26年度~令和3年度)

 

まとめ

 

■中規模・大規模の動物病院の増加

動物病院の規模(就業獣医師数別の施設の状況)の指標で分かる通り、獣医師2人以上勤務する中規模・大規模の動物病院が増加しています。

今後、企業などの新規参入(企業病院)が増えていき、規模の大きい動物病院が増加していくと予想されます。

同時にそれは獣医師の採用に苦戦する動物病院が増加することも意味しています。

また、1人体制で運営する動物病院は今後どのような立ち位置で経営していくかが課題となってきます。

 

■動物病院の専門特化

動物病院業界において専門特化している病院はまだ業界全体のうち数%に留まっています。そのため、専門特化するだけでも、差別化ができ遠方からの集患も可能となります。

動物病院業界の専門特化には縦軸・横軸があります。

縦軸・・・猫専門、鳥専門、うさぎ専門など(対象動物の専門家)

横軸・・・皮膚科専門、眼科専門、歯科専門、内視鏡専門など(診療科目の専門化)

一般的な動物病院も横軸の専門特化を実現していくことが経営の要となってきます。

 

■飼育頭数の減少とペットの支出の増加

人口減少に伴い飼育頭数も減っていく流れです。

犬の飼育頭数は大幅に減少しているが、都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数は微減で留まっています。

つまり、動物病院に来院するターゲット層(健康意識が比較的高い)そのものはここ数年では大きく減少していないことを意味しています。

そして、動物病院経営への追い風としてペットへの支出が大幅に増加していることが言えます。そのため、動物病院においても健康診断を含めた予防という意識も根付き始めています。

今後、客数だけでなく、客単価をしっかり上げていけるかという観点も重要です。

 

■猫診療件数の増加

2023年時点で飼育頭数は犬よりも猫の方が上回っています。犬の飼育頭数は大幅に減少する中、猫は横ばい、微減です。

そんな中、ペットの家族化(支出増なども踏まえ)により、猫を動物病院に通院させる層が徐々に増えつつあります。

実際、東京都内などでは犬の診療よりも猫の診療が上回っている動物病院も増えています。

つまり、従来は猫の診療は軽視されていたが、猫の診療を増やす努力をすることが今後の動物病院の経営を大きく左右すると思われます。

 

■獣医師・動物看護師の平均給与の向上

動物看護師が国家資格になったことで、動物看護師に対し従来の給与体系から資格手当(約1万円~2万円)を追加で付与し、給与をひきあげる動物病院も増えています。

獣医師については獣医師の採用難の状況が続いているため、採用力を高めるため獣医師の給与の引き上げをする流れも今後みえてくると予測されます。

 

■女性獣医師の増加と職場の環境

小動物に従事している20代の獣医師の男女比をみると、女性比率が男性比率を上回っています。

その一方で動物病院の働く環境が、家庭を持つ女性にとっては両立が困難な場合もあるため、休職・早期リタイアなどの懸念があげられます。

実際、30代以降の就業女性獣医師の割合が減少していて、まだまだ動物病院業界は女性が働きやすい環境が整備されていないことが伺えます。

現場で働き続けられる獣医師が不足している中、今後、女性が働きやすい労働環境・キャリアステップを必要とされています。

 

 

このように動物病院業界は課題も希望もある業界です。

是非、日々の経営の参考にしてください。