これから動物病院を開業していきたいと思っている方にとって開業までの流れやポイントのイメージが湧かない方も多いかと思います。
〜動物病院を開業するタイミング〜
臨床経験7年以上の方、年齢にすると30代の方または40代前半の方が多い傾向にあります。こちら状況などにもよってきますので、早くして開業される方も多くおられます。
また、開業時期としては年始が多い傾向にあります。健康診断・狂犬病前での開業だと多少は業績にも寄与しますが、あまり時期に関係なく開業される方も増えています。中には繁忙期まで現状の勤務先で働くという方も増えています。
このように時期で多少業績の変動がありますが、開業時期をどうするかよりも大事なのは、開業場所をどうするかです。
〜動物病院開業までの流れ〜
①コンセプト・事業内容の選定
②立地選定
③資金調達・借入
④機器選定・機材ディーラー選定
⑤施工業者選定・打ち合わせ・施工
⑥採用活動
⑦WEBサイト制作依頼
⑧各種メーカー契約・打ち合わせ
⑨院内オペレーション構築
⑩院内備品・在庫発注
⑪内覧会
⑫各種届出
大まかな流れはこのような感じですが、場合によって項目が前後する可能性があります。
ここでのポイントは「立地の選定によって開業スケジュールが左右される」ということです。なかなか良いところが見つからなければ、想定よりも2〜3ヶ月遅れてしまうこともありますし、逆に早く物件が見つかってしまうと想定よりも早い開業となってしまいます。この立地の巡り合わせはタイミングなどにもよってきますので、不確実性が高いのも事実です。開業を急ぐあまり納得していない物件に決めてしまうのは避けるべきです。
そして、立地が決まったら開業の準備が一気に忙しくなることを覚えておきましょう。そのため、早めに実施できる項目は立地選定前から実施してもいいかと思います。例えば、HP記事、ロゴ制作、料金設定、機器ディーラーとの打ち合わせなどです。
〜動物病院開業の際のポイント〜
中には動物病院を開業してもなかなか診察件数が増えない・売上が上がらないといったことも耳にするかと思います。
ただしっかりとポイントさえ抑えておけば、着実に繁盛する動物病院になります。ここでは動物病院開業の際の成功のポイントについて触れていきます。
まずは基準になる数値について説明していきます。
動物病院の開業後、1日平均来院数は約5件程度になってきます。勿論、土日などは多くなる傾向になりますが、週単位でならすとそのような件数になってくるかと思います。そして、この平均来院数を早期に平均10名以上にしていくとよいでしょう。
また、動物病院業界の平均年商は2,000万円〜3,000万円ですので、開業後に如何にこの金額を上回っていけるかが大事になってきます。
この数字をどうやって達成していくかをお伝え致します。
・集患(まずは新患)
動物病院を開業しても患者さんが来てくれないと意味がありません。つまり、如何に集客を頑張るかが大事になってきます。開業後、即時業績を上げたいのならば50件以上は新患数を集めることが重要です。
下記は弊社が運営している動物病院(ねこのクリニック浦和)の開業後3ヶ月の新患数の経路の平均になります。
HP・・・57.8%
Instagram・・・6.7%
チラシ・・・4.4%
内覧会・・・4.4%
近所・・・25.6%
その他・・・1.1%
これを見ると6割はHPやInstagramというWEB媒体での来院になります。
これは他の動物病院でも同じ傾向にあります。また、この傾向は都心部だけでなく、郊外でも同じです。
つまり、WEBに注力することで新患数が獲得しやすいと言えます。
〜物病院の開業医の年収について〜
動物病院での年収について気になる方も多いので、その点についてお伝えいたします。
まず動物病院業界は年収が低すぎるという現状があります。
ヒトの診察をする医科などと比べて、なぜ低いのか?
一つが完全自費だからです。人間の医科には保険診療があり、それが医院の安定的な収益の柱となっています。動物病院は保険診療がないので、その点、なかなか業績が上がりにくいという実情があります。
また、診察件数も人間と比べて少ないです。そもそも犬・猫の飼育頭数は全国の世帯数のうち23%程度ですので、必然的に少なくなるのはわかるかと思います。
しかし、人間の美容外科なども件数は多くなくとも自費で儲かっているので、動物病院もそうではないか?
と思ってしまう人もいるかと思います。
動物病院業界での自費は単価が低いというのが現状です。動物病院によっては客単価が1万円に達しておらず、いくら件数を増やしてもなかなか売上が伴わない場合もあります。
このように動物病院業界は完全自費、尚且つ、自費の単価が低い・件数も少ないのが現状です。また、動物病院において、稼働人数は多いものの、その分の生産性が取れていないのも事実です。つまり、まだまだ非効率な病院も多いということです。その結果、他の医科業界よりも年商規模が低くなってしまいます。
それに伴って、必然的に病院で出せる給与に限りが出てきます。
そして、経営者・代診・動物看護士など役職・職種によって年収の幅は広いです。下記にて、職種別に目安の年収を記載します。
・動物看護師
200万円〜300万円
国家資格化することもあるので、今後、年収が高くなる傾向にあると思います。また、実施出来る範囲も増えたので、歩合制を導入する病院も徐々に増えてくるかと思います。
・代診の先生(獣医師)
400万円〜800万円
人間の医科・歯科と比べると、まだまだ年収は低い状況にあります。代診の先生の場合、件数・金額がわかりやすく出るので、歩合制を導入している病院も増えています。
・院長先生
800万円〜1,000万円
「院長になったら、物凄く年収がもらえるのではないか?」と考える方もいますが、1,000万円以上の年収をもらっている院長は少ないのが実情です。更にこれはあくまでも目安ですが、800万円以下の年収の院長先生も多くおられます。また、院長(代表)であれば、会社に残すか、自身の年収に反映させるかになるかなどの絡みも出てきます。ただ現状の勤務医は、業界的に給与が低い状況ですので、開業した方が年収があがるケースも多いかと思います。
※ご自身で開業する場合、すぐに年収があがるという訳ではなく、徐々に上がっていくイメージを持っていただくとよいでしょう。特に開業1、2年目は貯蓄は難しいケースも多いです。
全体的にまだまだ年収の低い業界ですが、動物看護師、獣医師(代診)は今後、平均年収は増加していくと思われます。
ただし、いまだに長時間労働・長時間残業の病院も多く、動物病院業界の働く環境はまだまだレベルアップが必要だと言えます。就職の際には成長の軸も重要ですが、労働環境にも目を向ける必要があります。
今回の記事を参考に是非、動物病院の開業を成功させて下さい。